気候・風土
士幌町の地形は平坦な部分が多く海抜平均で210m、多くは火山灰が堆積した肥沃に富んだ土壌です。
気候は、大陸性気候で8月の最高気温が平均24℃、2月が最も寒く最低気温の平均で-14℃、降水量は900mm、積雪は比較的少ないのが特徴です。
士幌町農業の特色
持続可能な農業生産の基礎として4年輪作体系の確立を最重点課題として取組み、計画を遵守した生産により『馬鈴しょ』『小麦』『てん菜』『豆類/スイートコーン』がそれぞれ1/4の作付け比率となっております。また、輪作体系の中で堆肥の投入についても積極的に行っており、畜産農家から堆肥の提供を受ける替わりに、畑作農家が小麦の麦わらを牛の敷料として提供する循環型の農業を展開しております。
緑肥の導入にも積極的に取り組んでおり、堆肥を含めた有機物の投入は小麦跡の85%となっており、導入緑肥のうち8割が馬鈴しょにおける「そうか病」等の土壌病害低減効果の高い野生エン麦を選択し導入しております。さらに圃場の酸度矯正・石灰質の補給として、てん菜糖の製造過程での副産物であるライムケーキの導入を推進しており、作物の永続的な生産と、資源の有効活用による環境に配慮した土づくりを実践しています。
堆肥や緑肥といった有機物施用を行いながら輪作体系を遵守し、また土壌分析や新規銘柄を活用することにより、過剰な化学肥料の投入を防止するとともに、さらなる投入量の削減を目指しております。農薬についてはドリフト(周辺への飛散)させない取組や低水量・低薬量散布の効果検証など、環境負荷の低減を推進しております。また、使用後の農薬容器や栽培用資材などの廃棄物については、JA青年部が中心となって受入・分別作業を実施し、適正な処理に取り組んでおります。
高品質高生産のかなめ「輪作」って?
輪作とは?
同一耕作地に異なる種類の作物を交代に繰り返し栽培すること。
なぜ輪作をするの?
- 収量の低下を防ぐ
- 病害虫発生の抑制
- 複数の作物を作ることにより、作業ピークをずらせる
「士幌のイモ」(士幌馬鈴薯施設運営協議会)
士幌馬鈴薯施設運営協議会
昭和35年より馬鈴薯関連施設の共同利用体制を構築しました。
近隣農協のJA音更町・JA木野・JA鹿追町・JA上士幌町の4町5農協が参加し澱粉工場の利用から始まり、現在は食用馬鈴薯の一元集荷を実施しています。
主な施設
- 澱粉工場
- 馬鈴薯貯蔵施設
- 熊谷市消費地出荷施設(埼玉県)
品種及び用途
生食用~
加工用~ポテトチップ、コロッケ、ポテトサラダ等
澱原用~ 澱原生産を目的に栽培
- コナフブキ
- 紅丸など
馬鈴しょの用途別面積 (H21年 協議会 実績)
加工食品の内訳
おいしいじゃがいもを作るポイント
- 種いもの100%更新
- 適正輪作・土づくり
- 適正施肥
- 品質(品位)検査の充実
- 安全・安心への取組
十勝地区は馬鈴しょの生育期間中に昼夜の温度差が大きいため、澱粉をたっぷり蓄えたホクホクの馬鈴しょ栽培に最適な環境です。
「じゃがいも」の生育過程
士幌町では、馬鈴しょとの適正な輪作体系を確立するために昭和60年度にスイートコーンの加工設備を整備し、町内で60戸、146haのスイートコーンの作付けが始まりました。
当初は栽培技術が確立しておらず、反収や収益性も低いことから作付け面積はそれほど伸びませんでしたが、その後、適正な輪作体系を守っていこうという農家の希望もあり、規模は拡大してきました。
また平成21年より、スイートコーン加工設備を増強して、生産・供給体制を拡大しており、当組合工場向けに上士幌町、鹿追町、音更町も含め、205戸、685haの作付けを行っています。
収穫から製品化まで
スイートコーンは、収穫適期が短く、収穫後の時間の経過により糖分の低下が著しいため、食品工場の操業に合わせた適正な収穫が求められます。
8月中旬から9月末までの期間、順次収穫適期となるように農家ごとに播種の時期や品種を決めて計画的に生産しています。
食品工場で加工されるスイートコーンは、工場の原料担当者がほ場を巡回し、収穫適期となったほ場のスイートコーンを工場の操業に合わせて収穫します。食品工場では、収穫後おおむね4時間程度で、スイートコーンの芯を外して粒だけの状態にした後、蒸し上げ、さらに急速冷凍して『ホールコーン』として製品ができあがります。
また、スイートコーンの加工残渣(ざんさ)は、裁断して畜産農家へ販売し、飼料として利用されています。
製品の製造においては、本年度から最新の加工設備の導入により、歩留まりの向上、機械化によるコストダウン、選別能力の向上などさらなる品質の向上を目指しています。
ハーベスタによる収穫
販売戦略
スイートコーンはほかの作物に比べ防除の回数が少ない作物ですが、収穫直前に生産者から生産履歴を提出していただき農薬の使用状況の確認を行うとともに、残留農薬検査を実施するなどしてより安全な製品づくりに対応しています。
また、原料のみならず、加工、流通にいたる安全管理体制(トレース管理)も整備されており、さらに製品についても残留農薬検査を実施するなど安全の確認を徹底しています。
食品工場では、品質管理部門を設け、多種多様な取引先の協力・指導を受けながら長年培ったノウハウによる安全な製品づくりを心がけており、平成14年7月には、ISO9001の認証を取得しております。
また、ユーザーのニーズに合わせた多種多様な製品包装形態に対応し、特定の業態に限定せず、各種業態へ幅広く販売し、安定した供給・販売を実施しております。
より安全・安心な食品が求められ、国産農産物への嗜好が高まる中、ホールコーンの需要も増えていますが、一時的な需要への対応ではなく、末永く適正な取引条件にて販売できるよう、取引先との関係づくりに心がけています。
冷凍ホールコーン
砂糖の原料となるてん菜は、ビートまたは砂糖大根とも呼ばれるホウレンソウの仲間で、日本では冷涼な北海道だけで作付されています。根の部分に糖分を含んでおり、成長すると直径約15センチメートル重さ約1キログラムになります。てん菜の根1キログラムからはおよそ160グラムの砂糖がとれます。
国内における砂糖の年間需要量はおよそ220万トンとなっており、タイ・オーストラリア・南アフリカなどからの輸入量が約130万トン、国産が約90万トンとなっています。そのうち北海道産てん菜からできる砂糖が約72万トン、鹿児島県や沖縄県産のさとうきびからできる砂糖が約18万トンとなっています。
士幌町で収穫されたてん菜は、北海道内に8つある製糖工場のうち、清水町にあるホクレン清水製糖工場に運ばれて砂糖になっています。
士幌町におけるてん菜生産量
年産 | 面積(ha) | 生産量(㌧) | 糖量(㌧) |
---|---|---|---|
平成19年 | 2,402 | 154,718 | 26,809 |
平成20年 | 2,365 | 146,998 | 25,669 |
平成21年 | 2,282 | 113,915 | 20,750 |
砂糖の用途別消費量
(平成19年度)
「てん菜」ができるまで
あずき(小豆)
あずきの原産地は一般に東アジアと考えられています。
あずきの名の由来は、江戸時代の学者、貝原益軒の「大和本草(やまとほんぞう)」によれば、「あ」は「赤色」、「つき」及び「ずき」は「溶ける」の意味があり、赤くて早く柔らかくなるということから「あずき」になったとされています。なお、英語では、"adzuki bean","small red bean"などと表記されます。
だいず(大豆)
大豆は、中国では米、麦、粟、黍(きび)又は稗(ひえ)ととも五穀の一つとして数千年も前から栽培されてきました。朝鮮半島を経由して日本に伝わるのは、弥生時代初期とみられ、国内で広く栽培されるようになるのは鎌倉時代以降です。なお、豆粒がはるかに大きいそらまめ等を差し置いて「大豆」と呼ばれるのは不思議な気もしますが、当時は単に「豆(まめ)」と言えば大豆のことを指すほど重要視されていたため、「大いなる豆」、「大切な豆」との意味でこのような表記になったと言われています。
一方、英名の"soybean"は、醤油(英語で"soy")の原料であることに由来しています。
金時
金時豆は、いんげんまめの代表的な種類で、約7割を占めています。中でもよく知られているのが「大正金時」という品種です。昭和初期に北海道の十勝地方の幕別村で見つけられ、大正村(現在は帯広市内)で量産されたことからその名が付きました。赤紫色が鮮やかなことから赤いんげんとも呼ばれます。
白色をした「福白金時」もあります。
金時豆は粒の形が良く、食味も優れていることから、煮豆用に最も適した豆とされ、洋風の煮込み料理にもよく用いられます。甘納豆の原料としても重要です。
豆の栄養素(栄養満点の健康食品)
豆類は、含まれている栄養成分の構成割合により、炭水化物主体グループの豆(あずき、いんげんまめ、花豆、えんどう、そらまめ)と脂質主体グループの豆(大豆及び落花生)の2グループに大別することができます。いずれのグループに属する豆も、ビタミンB1、B2、B6等のビタミンやカリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛等のミネラルを豊富に含んでいます。また、豆類には、食物繊維、サポニン、ポリフェノール等の機能性成分が多く含まれており、最近、これらの健康に及ぼす効果が注目されています。
雑豆の用途別消費量
「まめ」ができるまで
日本国内における小麦の消費量は年間約630万トンとなっており、これは国民1人当りに計算すると年間約32キロ消費していることになります。しかし、国産小麦の生産量は約90万トン程度しかなく、ほとんどはオーストラリア・カナダ・アメリカからの輸入品でまかなわれており国内自給率向上が最も必要な食料のひとつとされています。
北海道産小麦については約60万トン生産されており、主な用途はうどん・ひやむぎ・即席めん等の「日本めん用」となっております。平成21年産より、多収量で製めん適性、製粉適正に優れた品種「きたほなみ」の作付が開始されており、平成23年産からは北海道の主力品種となることが見込まれております。
士幌で収穫された小麦は、JA施設にて乾燥・調製され、ホクレン農業協同組合連合会のオーダーにもとづき、買い手(主に製粉業者)の使用計画にそってトラックや船で買い手(北海道内・北海道外の製粉業者など)へ運ばれます。製粉業者で粉にされた小麦は、製麺(うどん、ひやむぎ、ラーメン等)・製パンなどの2次加工メーカーへ供給され、さまざまな形の最終製品として消費者の皆様にお届けしています。
士幌町における小麦生産量
年産 | 面積(ha) | 生産量(トン) |
---|---|---|
平成19年 | 2,536 | 14,827 |
平成20年 | 2,567 | 15,758 |
平成21年 | 2,566 | 10,965 |
小麦の種類別用途
小麦粉の種類 | 主な用途 | たんぱく質含有量 | 主な原料小麦(カッコ内は略称) | |
---|---|---|---|---|
強力粉 | 食パン | 11.5%~13.0% | カナダ産ウェスタン・レッド・スプリング(CW) | アメリカ産ダーク・ノーザン・スプリング(DNS) アメリカ産ハード・レッド・ウィンター(HRW) |
準強力粉 | 中華めん、 ギョウザの皮 |
10.5%~12.5% | オーストラリア産プライムハード(PH) | |
中力粉 | うどん、即席めん、ビスケット、和菓子 | 7.5%~10.5% | 国内産 (北海道産ホクシン・きたほなみ 他) オーストラリア産スタンダード・ホワイト(ASW) |
|
薄力粉 | カステラ、ケーキ、和菓子、天ぷら粉、ビスケット | 6.5%~9.0% | アメリカ産ウェスタン・ホワイト(WW) | |
デュラム・セモリナ | マカロニ、スパゲッティ | 11.0%~14.0% | カナダ産デュラム(DRM) |
小麦の用途別消費量
「小麦」ができるまで
しほろ牛とは?
十勝北部・東大雪山系のすそ野に位置する自然環境豊かな一大農業地帯・士幌町。最高峰の東ヌプカウシヌプリをはじめ勇壮な山々を臨むこの広大な大地で、しほろ牛は育ちます。
しほろ牛は、この地の新鮮な空気と水で健康に育ったホルスタイン牛で、脂肪が少なく、ジューシーで柔らかい赤身が自慢です。
安全・安心な道産牛の産地として、士幌牛飼養管理マニュアルに基づき、JA、系統、肉牛振興会(生産者組織)、町、普及センター及び関係機関と一体となり、品質の安定と安定生産を目的に飼養管理技術の向上に努めています。また、最新の食肉処理施設(懸垂脱骨)で処理されており、衛生面でも自信をもっておすすめできます。こうして品質にこだわったしほろ牛は、年間で約11,000頭が関東・関西を中心に流通されています。
肉牛事業について
当JAの肉牛事業は、牛肉の需要安定に応えるために、1970(昭和45)年から本格的に開始されました。町内の酪農家から生産される乳用種雄子牛を肉用牛として肥育するために、まず、肉牛肥育センターを2ヶ所建設しました。その後、肉牛肥育センターは18ヶ所(JA建設)、一般生産者も肉牛の大規模飼養が始まり、肉牛の生産頭数は飛躍的に伸びて、1993(平成5)年には飼養頭数が30,000頭に達しました。
更に、1987(昭和62)年には食肉加工処理施設「士幌町振興公社」を建設し、生産だけでなく加工も手がけることにより、常に消費者ニーズに適う「しほろ牛」の生産に努めています。